たいていの花は咲き終えた後に実を付けるが、
見る人は花が終わってしまえば 後のことは忘れる。
しかし、小さな花も艶やかな花も、
それぞれ子孫を絶やさぬよう知恵を使って 新たな旅立ちに備える。
厳しい冬の前に、風に乗って飛んでゆく種子もあれば、
なにかのはずみでパチンとはじけて、ばねのように飛んでいく種子もある。
中には球根を太らせて、あらたな若い命を増やす花もある。
寒さが次第に厳しくなり、茎も葉も枯れて、茶色の世界に染まる頃
目の中に飛び込んでくる花たちの第二の開花。
その完璧な美しさに驚嘆する。
散歩の時間はこの花たちの姿に見とれながら、歩くことになる。
繊細な絹の細い糸のような綿毛。楕円形の筒の先がはじけた形。
見ていて飽きることがない。
自然が創り出す完璧な形がそこにある。
それらは、なんと美しい姿かたちをしているのだろう。
花たちは、「素直に、素直に、ありのままに、自然のリズムのままに生きればいいのよ・・」
と囁くようだ。
季節は巡り、人は過ぎて戻らなくても、新たな花は咲く。
輝くような花びらの季節はほんのつかの間でも、
生命は営みを絶やさない。
これら冬の姿をみて、輝くばかりの春や夏のとき、
ここにどんな色の花が咲いていたのか、思い出せる人は少ないかもしれない。
でも、それでいいのだ。そう思う。
hibari
2017.1.13